『愛する人を守れますか』

君を強くするトレーニング教本(バイブル)


可能性を秘める若き君へ

身体を鍛えること、それは自分自身を発見する第一歩

 これから大人の世界へ足を踏みいれようとしている君へーー。

 もし、君がいま、自分に自信がない、生きがいがない、何をしていいか分からない、と思っているなら、ためらわず、私のいうことを実行してみろ。

 それは身体を鍛えることだ。

身体を鍛えるといっても、なにも私はプロレスラーになれとか、マッチョマンになれとかいっているわけではない。身体を鍛えるということは、自分自身の可能性を発見するための第一歩なのだ。

 なぜ、身体を鍛えることが大切なのかーー。

 私はどんな人間でも、必ずなにか一つは優れた才能を持っていると思う。しかし、自分のなかに眠っている才能を見つけ出し、伸ばしていくことは難しい。それに哀しいかな、君たちを取り囲む環境(学校や家庭)は、学力以外の能力には余り目を向けようとしないのが現実だ。勉強が出来ない者、〈落ちこぼれ〉というレッテルを貼られた者は、すべてに自信を失ってしまい、秘められたる素晴らしい才能まで台無しにしてしまう。

 同じことは仕事を持つ社会人にもいえる。管理社会のなかで有能だということは、決められた枠のなかから、はみ出さないことなのである。

 人間は自信がなくては、なにも出来ない。しかし、身体を鍛えることによって、自信を身につけ、強い肉体はもとより、強い精神を育むことが出来るのだ。

「オレは鍛えているのだ」という自負と、その日々の過程(プロセス)が君の心の支えになっていく。それが自分の才能や可能性を見つけるのだという積極的な意志に、さらには、人を思いやる気持ちや、社会で役に立ちたいという気持ちに発展していくのだ。

 君だって「こんな人間になりたい」という漠然とした理想像を持っているだろう。

 愛する人を守れる人間。素晴らしい仕事が出来る人間。他人に感謝され、信頼される人間。ーーそんな人間に成長していくために、まず、しっかりと身体を鍛えて欲しい。そのための努力を積み重ねて欲しい。


身体を鍛えること、それは自分の未来を切り開くこと

 この本を手にとった君が、10年後、20年後、どんな才能を発揮して、世の中で活躍しているか、私には予想のしようもない。

 もしかしたら、君は世界的なアーティストになっているかも知れない。事業を起こして社長の椅子に座っているかも知れない。あるいはプロレスラーとして、私とリングの上で対戦していることだってあり得るだろう。

 君たちはまだ、なににでもなれる可能性を秘めている。

 そして、その可能性を見つけ、実現していくための時間もたっぷりある。くり返していうが、いまこそ、トレーニングを通して、独立した自分自身を育て上げる大きなチャンスなのだ。

 身体を鍛えることは、誰にでも始められる。特別な才能など、まったくいらない。

 私はこの本を通して、君たちが人間として、大きく成長するために、ほんのちょっとした手助けが出来れば、と思っている。

 1995年1月

馳 浩


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